L'ARAIGNEE-MAL / ATOLL

プログレはイタリアに限る(英国は別格という意味で)!と思ってますが、突如としてイタリアもんに優るとも劣らないバンド・アルバムが出てきます。それがこのATOLL。


太陽と情熱、そして裏返しの呪祖的おどろおどろしさの国、イタリアとは違ってフランスのATOLLはもうちょっとあっさりしているというか、良い意味でスタイリッシュです。これはフランスのプログレがドイツ・イタリアよりも数年遅れて盛り上がったこと、カンツォーネシャンソンの違いも起因しているでしょうね。イタリアの名作が71〜73年に集中しているのに対し、本作は75年の大傑作です。

トップの「悪魔祓いのフォトグラファー」、長めのイントロが朕美的です。段々とボーカルがキチガイになっていき邪悪なインストパートに突入するが、その間のブリッジがとても美しい!続く「カゾットNO.1」はノリのいいインストナンバー。リズム隊の切れがいい!この曲も随所に印象的なメロディが散りばめられてます。イタリアのバンドだと一つの印象的なメロディをこれでもか、とリフレインするんやけど、ATOLLの場合は決してひけらかさずにサラリと散りばめます。これが淡白というかスタイリッシュな印象を持たせるんやろね。「恍惚の盗人」はボーカルとインストのバランスのとれたコンパクト(とはいっても7分半)な佳曲です。特にイントロのギターのアルペジオをバックにバイオリンに導かれてボーカルがはいってくるとこなんかクリスタルな美しさです。

B面いっぱいを使ったタイトル曲の「夢魔」は4つのパートに分かれた組曲。ブライアン・オーガーを思わせる長めのイントロからゆったりとしたパートに入り段々と盛り上がりパート2「夢魔」に突入。この曲は印象的なメロディを盛り上げていく手法ですが、とにかく美しい。そしてハードな「狂った操り人形」を経て最後の「プラスチックの墓碑」。この曲もメロディがいい。割とサラリとしたA面に対し組曲のB面は曲が長く自由度が高いのか、メロディのリフレインも多く、それが結果的には大成功してます。22分という長さながらまったく飽きのこないユーロ・プログレを代表する名曲です。イタリアの一種ヴードゥー的なおどろおどろしさはなく、あくまでもスタイリッシュで朕美的美しさはいかにもフランスって感じです。

ディラン、コステロから果てはブルース3大キングからいきなりフランスのプログレに行ってしまいました。しばしプログレづいてみようかな?